歴史に思いを馳せる...神谷町

小出裕紀

今年五月、事務所が虎ノ門(神谷町)から、新宿区岩戸町(神楽坂)に移転した。
神谷町も歴史の濃い街だったが、神楽坂も同様である。

表通りはにぎやかで、コンビニやチェーン店が、かつての情緒を追いやっているように見えるが、
一本奥に入れば、昔ながらの雰囲気ある街の風情がまだ残っているのに気がつく。

神楽坂は花街であったのだ。
いや、現在もそうなのだが、芸妓の数は激減し、伝統は存続できるか怪しい。
泉鏡花や北原白秋、夏目漱石などそうそうたる文筆家に愛された神楽坂は、
いまや風前の灯火のようにも思える。
再開発は無惨にも歴史的な街を壊し、新たな創造の号令の元、正義の街作りを始める。
最後の神楽坂に立ち会っているのか、新生神楽坂に立ち会うのか、
しばらく街とともに歩むことになりそうだ。